やりたいことがあるなら、やった方がええよ!!三浦伸也さん:株式会社 ほがらかカンパニー


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著書『いつだって子どもがいちばん』発売中

sin1 しんちゃんの職業は「絵本を読む人」。東京を舞台にサラリーマン生活を送っていた40歳の時、4児のパパでありながら突然会社を辞め、「絵本を読む人」として起業しました。
それから三重県へ移住し、起業から13年たった今では、幼稚園・保育園を中心に年間300本もの朗読会・講演会に呼ばれる人気者に。しんちゃんの「絵本読み遊びライブ」は、幼稚園や保育園のほか、小学校、中学校、時には病院や喫茶店などさまざまな場所で開かれています。
また、しんちゃんの講演会では保護者や先生のほか、お坊さん、社長さんなど多くの人が聞き入っています。2015年には初となる著書『いつだって子どもがいちばん』を上梓しました。世の中になかった「絵本を読む人」という職業をつくること、それで家族を養うこと、その苦労や面白さを、しんちゃんに聞いてきました。

 

 

「絵本を読んで、お金を取るんですか?!」

sin2 しんちゃんが初めて絵本を読んだのが、40歳の時。それまではスーツを着て、東京の会議室で、大手機械メーカーに特許技術を売り込む仕事をしていたのだそうです。ある時酒の席で、我が子に絵本を読み聞かせる時間の豊かさを友人に説かれ、試しに一度読んでみたのが起業のきっかけだと振り返ります。

「それも、絵本読みに満足したというより朗読を通して『ウチの子、大丈夫か?』と不安になったという(笑)。読んだ絵本は、五味太郎さんの『るるるるる』。飛行機が飛んで『るるるるる』という、『る』ばかりの絵本で、僕には何が面白いのかまったく分からない。でも子どもは抱腹絶倒! 『よその子も笑い転げるのかな??』と思って、近所の保育園にお願いし、飛び込み絵本朗読をやらせてもらったのが、すべての始まりです。もう教室じゅうが、沸きに沸いて! その様子に僕は興奮して『これを仕事にしよう!』とすぐに会社を辞めました」。

突然の退職宣言でしたが、奥さんは反対どころか、背中を押してくれたのだそうです。

「僕は当時、会社勤めをしながらも、自分の仕事にまったく自信がなかったんです。静まり返った大きな会議室でプレゼンテーション。手応えがまったく掴めない。『いつか自分で何らかの事業を興したい』とは常々妻に話していたので、妻はやりたいことが見つかった僕を素直に祝福してくれました」。

かくして退職し、支援者を募り、東京に事務所を借りたしんちゃん。全国の幼稚園や保育園に『絵本を読みに行かせてもらいたい。講演させてもらいたい』と営業活動を始めました。しかし絵本の朗読会は、多くの場合無料で開催されています。例えば本屋さんで、また図書館で。そんな中、しんちゃんは有料で絵本を読むことにこだわりました。

「『え!朗読するのにお金を取るの?』って、当時はよく驚かれました。でも僕は、ワンコインでいいからいただきたい、とお願いしたんです。だって『タダで読んであげましょう』と『お金を貰って読ませていただく』では、読む心持ちが全然違うでしょ? 僕はお金を貰って、その責任を感じながら、貰った以上のお返しをしようと考えたんです。その結果、一度伺った園がリピーターさんになってくれたんです」。

 

東京にいたら成功してなかったと思う。

sin3 しんちゃんの「読み遊びライブ」は、お笑い芸人さんのようでもあり、音楽DJのようでもある、独自のスタイル。事前に読む絵本は決めず、100冊ほどの絵本を持って園を訪れ、子どもの反応に合わせて1冊を選び、絵本を読みながら子どもと一緒に全身で笑い、共に遊びます。

「なにせ『こうすれば成功する』なんてノウハウがないわけですから、全てが手探りで今に至ります。仕事が軌道に乗ったと実感するのはつい最近ですが、この仕事がものになる確信は起業を決めた時からありました。とは言え、最低2年はキツいだろうと予想を立て……」。

しんちゃんは、貯金を切り崩しながら当座をしのいだと振り返ります。遠方で「読み遊びライブ」を行う際には、車に絵本をたっぷり積み込み、車で寝泊まりしながら手作りのチラシを配って営業したのだそう。そして組織設立から1年半後、頼れる先輩に誘われたこともあり、三重県菰野町に移住しました。

「開業1年目に伊賀市で2つの園に呼んでいただきました。すると翌年には、なんと伊賀市じゅうの園から呼んでいただいたんです! どうやら先生同士の口コミで評判が広がったようです。人と人の信頼関係で町じゅうが一繋がりにながっていたんですよね。おかげさまで、今に至るまで、ずっと根強く応援していただいてると感じます。これは東京ではありえない現象。だから僕は、あのまま東京にいたら成功していなかったなって思います」。

 

まだ見ぬ景色を見たい、これからも。

sin4 読み遊びライブを通してこの13年間で出会った子どもの数は10万人以上。年に300本の読み遊びライブを行う多忙なしんちゃんですが、現在新しいプロジェクトを次々とスタートさせています。その一つがニュージーランドでの読み遊びライブ。

自称英語はダメダメというしんちゃんが、名張市内にある幼稚園の協力のもと、英語で絵本を朗読する実験をはじめ、2015年の夏にニュージーランドで読み遊びライブを催しました。その結果に手応えを感じたしんちゃんは今、インターネットを活用した国際交流を考えています。
また、東日本大震災での絵本朗読ボランティアをきっかけに『NPO法人ほがらか絵本畑』を、地元の民話を絵本化しようと『菰野町絵本のまちづくり文化プロジェクト実行委員会』を、近年それぞれ立ち上げました。

「見たことのない景色を見るのが好きなんでしょうね、僕。事業を始めると、困ったことや予想外のことが起こり、とにかく大変ですが、でも『やっぱりやりたいことを仕事にした方がええよ』と思っているし、我が子にも常々言っています。前に、僕の息子がこう言ってたんですよ『やりたいことが特にないから、とにかく安定した仕事に就こうと思う』って。その時こう諭しました『卒業してからの人生、遊ぶ時間より働いてる時間のほうがず〜っと長いんやぞ? そのことをよ〜く考えた方がいい』って。どっちに行こうか迷ったら、ワクワクする方を選んだらいいんですよ」。

著書『いつだって子どもがいちばん』には、絵本という奇想天外な夢の世界で心のまま遊ぶ面白さが書かれています。小さな子どもに限らず、夢見るちからをもう一度考える1冊となりそうです。

2015/11現在

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